第1話「みんないい顔していた」
事務長のつぶやき2026年7月31日 更新
先日、野宮病院で小さな夏祭りを開催しました。
「病院の中だけではなく、患者さんに少しでも外の空気を感じてもらいたい。」
そんな思いは以前から私の中にありました。
約3年前、病院とグループホームの間に東屋のような憩いのスペースを設けました。患者さんが気軽に外へ出られる場所をつくりたいという思いからでしたが、せっかくの場所も「外へ出るきっかけ」がなければ、なかなか活用されません。
そこで今回、その場所を舞台に小規模な夏祭りを企画しました。
綿あめやソフトクリーム、冷たいジュースやお茶、コーヒー。そして炭火で焼いた焼き鳥やつくね。さらに院内では、小さなお神輿に袋菓子を載せ、患者さんに引いていただく催しも用意しました。決して豪華なお祭りではありませんが、「病院の中でも季節を感じてもらいたい」「少しでも非日常を味わっていただきたい」という思いを込めて準備を進めました。
当日は、あいにくの雨模様。気温も低く、「果たして患者さんは来てくれるだろうか」と少し心配していました。
それでも、職員に手を引かれながら患者さんが次々と会場へ足を運んでくださいました。テントの下に並べた長椅子に腰掛け、焼き鳥を頬張る方、ソフトクリームや綿あめを嬉しそうに味わう方、冷たい飲み物を片手に笑顔を見せてくださる方……。その何気ない光景が、とても印象に残っています。
一方で、体調やご事情からどうしても屋外まで出ることが難しい患者さんもいらっしゃいました。その方々には、会場を見渡せる院内ホールで焼き鳥や飲み物を召し上がっていただき、お祭りの雰囲気だけでも感じていただけるよう工夫しました。会場から聞こえる賑やかな声に耳を傾けながら、穏やかな表情で過ごされていた姿もまた、とても心に残っています。
企画は私と看護部長で考えましたが、当日は各部署の管理者や職員が出店を担当し、頼もしい営繕部隊が設営から撤収まで見事なチームワークを発揮してくれました。
そして何より心に残ったのは、院長と副院長の姿です。
雨の中、患者さんや看護職員が濡れないよう傘を差し、一人ひとりを会場まで案内する姿。時には患者さんと自然に手をつなぎながら歩く姿を見て、「こういう病院で働けることは幸せだな」と、少し誇らしい気持ちになりました。
わずか3時間ほどの催しでしたが、患者さんの表情は普段とは少し違って見えました。笑顔が増え、会話が弾み、病棟では味わえない時間を過ごしていただけたのではないかと思います。
買い物から準備、そして後片付けまで慌ただしく動き回り、身体は正直くたくたでした。それでも、不思議と疲れよりも充実感の方が大きく、「来年もまた開催しよう。」そんな思いを胸に家路につきました。
病院の仕事は、治療や看護だけではありません。
季節を感じたり、誰かと笑い合ったり、「今日は楽しかった」と思える時間をつくることも、患者さんの心に寄り添う大切な医療の一つなのかもしれません。
自宅までの帰路で、ふと思いました。
「みんないい顔をしていたなあ。」
患者さんも、職員も。
この笑顔があったからこそ、疲れよりも充実感が勝った一日だったのだと思います。
また来年も、この笑顔に会えることを楽しみにしています。